十角館の殺人 綾辻行人 書評
十角館の殺人 綾辻行人
講談社文庫
クローズドサークルの名作であり、たった一言のセリフで全てをひっくり返されるどんでん返しを持つ国内ミステリーの最高峰の作品の一つです。
読了当時、まさにページを捲る手が止まらず、寝るのを忘れて読み、夜中に一人で衝撃を受けたことが未だに思い出されます。
大学ミステリ研究会のメンバーがそれぞれニックネームで呼び合いながらも、閉ざされた孤島に立つ館で次々と殺されていく。
アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」を彷彿とさせる作品で、もちろん影響は多大に受けておられるとは思いますが、設定といい、構成といい、ミステリマニアを満足させる作品であることは間違い有りません。
著者のデビュー作ということで、私としましては当時、多少粗い部分も見受けられると思っていたのですが、今思えば、その粗さも最後のオチへのフリであえてそうしているのかもしれません。
推理小説、特にどんでん返し系というのは、どうしても読む順番、その作品をミステリーにどれくらい慣れた状態で読めるか、食事やワインのように、シチュエーションや体調、経験によっても感じる読後感が左右されうるものだと考えています。
そういう意味では私はとても幸運で、思い出に残るミステリートップ10に確実に入る作品です。
至るところで推薦もされており、なんとかネタバレを踏まずにたどり着いて欲しいミステリーですが、一つだけ注意点があります。
全くのミステリー初心者にはオススメできないのです。
オススメできないというのは、語弊がある言い方ですが、ミステリーの予備知識を持ってから読むと衝撃度が増す、という表現が正しいでしょうか。
これ以上いうと核心に触れてしまうのでもどかしいところです。
しかし、それもあまりに偉大な作品であるがゆえに、似たトリックも多くありまして(他の作品を下げているわけではもちろんありません。後発でも素晴らしい作品は多くございます)、
先述の通り、作品に触れる順番によっては「ああ、知ってる」となってしまったら、、、それは非常に、非常に残念なことです。
ちょっとミステリーを読み始めました、海外古典も名前くらいは知っているし、クローズドサークルは最高だよね。
そういった方はきっと生涯における思い出の作品になると思います。
是非、御一読を。