そして誰もいなくなった 書評
そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー 原題: And Then There Were None
著者の代表的な長編作品であり、絶海の孤島などの閉ざされた空間モノ(「クローズドサークル」)や特定のモノに見立てて殺人が行われる「見立て作品」の名作です。
世界で一番売れたミステリー作品であり、ミステリー界の女王と呼ばれたアガサ・クリスティーの世界観が堪能できる作品です。
10人の登場人物が次々と逃げられない状況下の中で、追い詰められ、殺されていく。
被害者は童謡の同じようなシチュエーションで殺されており、最後のオチではあっと驚く結末が用意されているといった、今では幅広く使われているミステリーの基本が詰め込まれた作品になっています。
正直なところ、この作品に影響を受けた作家は数多おられるので、現在のミステリー書籍の期待値からするとラストの展開は厳しい面があるというのも事実です。
ですが、徐々に追い詰められていく緊迫感。
この作品が1939年に書かれた作品であることを考えると、当時の作家の凄みや技術が伝わります。
何十年と残る作品であることは納得ができるかと思います。
映像化も何度もされており、ネット上には今作に限らず有名作品はネタバレが大量に見られる昨今。
最後のシーンも非常に有名で作品名を知らなくても、その場面は知っている、という人も多いことと思います。
翻訳も読みやすく、ミステリーの古典と言われる中では入りやすい一作ですので、初心者の方には特にオススメの作品です。
ネタバレ無く読める方はとても幸運な方ですので、是非楽しんでみて下さい。