刑事コロンボ 殺人処方箋 書評
刑事コロンボ 殺人処方箋
Prescription : Murder / 1968
ウィリアムリンク リチャード・レヴィンソン
世界で最も有名な倒叙型推理タイプのシリーズです。ピーター・フォーク演じる刑事コロンボが真犯人を追いつめていく人気ドラマを小説化したものが今作になります。
倒叙型とは「最初から犯人がわかっている」状態のミステリーで、主人公は犯人側であることが多く、それを追いつめる名探偵との駆け引きを楽しむといった通常のミステリーとは違ったタイプになります。
日本では刑事コロンボをオマージュした古畑任三郎シリーズが有名です。古畑任三郎シリーズには刑事コロンボに使われている小ネタが十二分に盛り込まれていて、深いリスペクトが感じられます。
今作は、そんな刑事コロンボのドラマ第一作目をノベライズしたものですが、映像とは違い小説ならではの人物の内面描写が良くできており、ファンでなくても楽しめる作品となっています。
シリーズ最初の作品ということで、コロンボのキャラクターの主となる部分、「しつこく付きまとう」「よく忘れ物をする」「道化を演じて油断を誘う」なども表現されていますが、後に強調されてくる愛嬌のある中年というイメージは比較的薄く、かなりの力業や意図的に言葉を荒げる場面も見られ、主人公であるフレミング医師を追い詰めていきます。犯人側のフレミング医師も優秀な犯罪者で、強者同士の心理戦はたしてどんな結末を迎えるのか。
何故コロンボは彼を犯人だと目星をつけたのか。どうやって追いつめていくのか。そして、何が決め手となって逮捕に至るのか。楽しめるポイントが多いのも、このタイプのミステリーの特徴です。
何より、コロンボという魅力的な偉大なるキャラクターを要している時点で、他の作品との大いなる差別化になっていると思います。
和訳も読みやすく、そこまで難しいロジックもありませんので、初心者の方にもおすすめです。
是非、倒叙型ミステリの大家を味わってみてください。