アディダス商標権トラブル:実際に起きた事例から学ぶ
実際に起きた事例から学ぶ
ロゴデザインはブランドの顔とも言える重要な要素であり、その独自性や識別性を保つために著作権や商標権で保護されます。
しかし、デザインのシンプルさや一般性が高い場合、その保護が認められないこともあります。
今回は、スポーツブランドのアディダスが使用する「三本線」の商標権が欧州連合(EU)の裁判所で無効と判断された事例を通じて、ロゴの商標権について学んでいきましょう。
アディダスの三本線とは?
アディダスは、靴や衣料品に三本の平行な線を配置したデザインを長年使用してきました。
この「三本線」は、同社のブランドを象徴する重要な要素として広く認知されています。
アディダスは、このデザインを商標として登録し、他社による類似デザインの使用を防ぐことで、自社ブランドの独自性を維持しようとしてきました。
商標権の申請と異議申し立て
アディダスはEU域内で「向きを限定しない、同じ幅の三本の平行線が等間隔に配されている」デザインを商標として登録しました。
しかし、ベルギーの企業であるシュー・ブランディング・ヨーロッパ(Shoe Branding Europe)がこの登録に異議を申し立てました。
同社は、このデザインが独自性に欠け、商標としての要件を満たしていないと主張しました。
EU知的財産庁の判断
EU知的財産庁(EUIPO)は、シュー・ブランディング・ヨーロッパの主張を認め、アディダスの三本線商標の登録を無効とする決定を下しました。
EUIPOは、このデザインが一般的な図形であり、独自性が不足していると判断しました。
アディダスの上訴とEU一般裁判所の判決
この決定に対し、アディダスはEU一般裁判所に上訴しました。しかし、2019年6月19日、EU一般裁判所はEUIPOの判断を支持し、アディダスの上訴を棄却しました。
裁判所は、アディダスがこの三本線デザインがEU全域で独自のキャラクターを獲得していることを十分に立証できなかったと結論付けました。
参考:WWDJapan
判決の背景と理由
EU一般裁判所は、以下の点を考慮して判決を下しました。
- 独自性の欠如:三本の平行線というデザインは非常にシンプルであり、一般的な図形とみなされる可能性が高いと判断されました。
- 識別力の不足:アディダスは、このデザインがEU全域で同社のブランドを示すものとして認識されていると主張しましたが、裁判所は提出された証拠が不十分であると判断しました。
- 一般的な使用:三本線のデザインは、他のブランドや製品でも使用される可能性があり、特定の企業の商標として独占的に保護することは適切でないとされました。
判決の影響とその後の展開
この判決により、アディダスはEU域内で三本線デザインの商標権を主張することが難しくなりました。
しかし、アディダスは他の特定のデザインや配置に関しては引き続き商標権を保持しており、ブランドの保護を続けています。
また、同社はこの判決がブランド全体に大きな影響を与えるものではないとコメントしています。
参考:ねとらぼ
ロゴデザインにおける教訓
この事例から、ロゴデザインに関して以下の点を学ぶことができます。
- 独自性の重要性:ロゴやデザインが一般的すぎる場合、商標としての保護が認められない可能性があります。他のデザインと明確に区別できる独自性が求められます。
- 識別力の確保:消費者がそのデザインを特定のブランドと結びつけて認識することが重要です。長期間の使用やマーケティング活動を通じて、デザインの識別力を高める努力が必要です。
- 一般的なデザイン要素の使用:シンプルな図形やパターンは、多くの企業や製品で使用される可能性があるため、独占的な権利を主張することが難しい場合があります。デザイン要素の選択には注意が必要です。
まとめ
アディダスの三本線商標に関するEU裁判所の判決は、ロゴデザインの独自性や識別力の重要性を再認識させるものでした。ロゴデザイナーや企業は、デザインの独自性を高め、消費者に強く認識されるような工夫をすることが、ブランド保護の観点からも非常に重要です。また、一般的なデザイン要素を使用する際には、その保護範囲や他社との競合を十分に考慮する必要があります。