妖魔の森の家 書評
妖魔の森の家
原題:The Third Bullet and Other Stories
ジョン・ディクスン・カー
出版社:東京創元社
こちらは短編集になりますが、表題作は推理小説好きの中では知らない方は少ないのではないでしょうか。
カーの作風をよく表しており、不可能犯罪と驚愕のトリック、そしてそれを解く名探偵というミステリーの王道に近い名作です。
完全密室からの消失という魅力的な謎、そして、ミステリーとしての奇々怪々の不気味さ。
作者の意図として非常によく文章も考えられており、「そういうことか」と読み終わった後も驚きと戦慄の余韻が残る作品になります。
昨今のミステリーの多種多様性から、似たトリック(といいますかオチといいますか)は確かにあるのですが、この作品ほどの作りこまれた雰囲気の作品は少ないのではと思います。
また、カーの作品によく出てくる名探偵ヘンリー・メルヴェル卿(以下、H.M.)が初めて出てくるのがこの作品です。
他にも短編と中編が収録されております。
それぞれ粒ぞろいではありますが、表題作がインパクトがありすぎて、そこまで印象に残らないかもしれません。
第三の銃弾という中編は、構成がロジカルであり、よく練られた作品ですので、ロジック系ミステリがお好きな方にはお勧めできるかと思います。
是非、ご一読を。