なぜロゴデザインは、シンプルで平面的な方が実務的に使いやすいのか

ロゴデザインをご依頼いただく際、
- もう少し立体感を出したい
- グラデーションを入れたい
- 陰影をつけて高級感を出したい
- 細かい装飾を増やしたい
といったご希望をいただくことがあります。
もちろん、立体的なロゴにも大きな魅力があります。
奥行きや光沢を加えることで高級感が出たり、存在感が増したり、ブランドの世界観を強く表現できることもあります。
そのため、私は「ロゴは必ず平面的でなければならない」と考えているわけではありません。
ただ、ロゴデザイナーとして実際の使用場面まで考えると、シンプルで平面的なロゴには非常に大きなメリットがあります。
今回は、その理由をデザイナーの目線からご紹介します。
ロゴは「見るもの」ではなく「使うもの」
ロゴは、完成したデザインを眺めて終わりではありません。
実際には、さまざまな場所で使われます。
例えば、
- ホームページ
- SNS
- 名刺
- ショップカード
- チラシ
- 看板
- パッケージ
- ステッカー
- ユニフォーム
- 刺繍
- ゴム印
- 焼印
- 箔押し
- カッティングシート
などです。
ここで重要なのが、
「すべての媒体で、同じように再現できるとは限らない」
ということです。
細かすぎるデザインは、小さくすると潰れてしまう
パソコンの大きな画面でロゴを見ていると、細かい部分まできれいに見えます。
しかし、実際にはロゴが数センチ程度まで小さくなることも珍しくありません。
例えば名刺やSNSのプロフィール画像です。
細い線や細かな模様が多いロゴの場合、
- 線が潰れる
- 模様が見えなくなる
- 文字が読みにくくなる
- 全体が黒い塊のように見える
といった問題が起こることがあります。
そのため、私はロゴ制作の途中でも、何度もデザインを縮小して確認します。
「小さくしても分かる」はロゴにとって重要
ロゴでは、細かい部分まで描き込むことよりも、
- 遠くから見ても分かる
- 小さくしても形が分かる
- 一瞬見ただけでも印象に残る
ということが非常に重要です。
特に現在では、スマートフォンでホームページを見る人も多く、SNSでは小さな丸いアイコンとして表示されることもあります。
大きな画面で美しく見えるだけでは、十分とは言えません。
平面的なロゴは、いろいろな媒体で使いやすい
シンプルで平面的なロゴの大きなメリットは、
使用する媒体を選びにくいことです。
例えば、グラデーションや複雑な陰影を使ったロゴは、Webサイトでは美しく表示できます。
しかし、
- 刺繍
- 焼印
- ゴム印
- 一色印刷
- 箔押し
などでは、そのまま再現できないことがあります。
一方、シルエットや色面を中心に作られたロゴは、黒一色にしても形が崩れにくくなります。
私は「モノクロでも成立するか」を意識しています
ロゴを制作する際、私が意識しているポイントの一つが、
「黒一色にしてもロゴとして成立するか」
ということです。
色を外した瞬間に何のマークか分からなくなってしまう場合、そのロゴは色や陰影に依存している可能性があります。
逆に、
黒一色でも分かる
↓
形そのものに特徴がある
↓
カラーにしても立体化しても展開しやすい
という考え方ができます。
シンプルなロゴは、表現を制限するものではありません。
むしろ、後からいろいろな表現へ展開するための「土台」になるデザインだと私は考えています。
立体的なロゴが悪いわけではありません
ここは誤解されやすい部分です。
立体的なロゴやグラデーションを使用したロゴが、悪いわけではありません。
例えば、
- 高級感を出したい
- 光沢感を表現したい
- キャラクター性を強くしたい
- Webや動画を中心に使用する
といった場合には、立体表現が非常に効果的なこともあります。
ただし、その場合でも重要なのは、
「立体表現を外しても基本の形が成立していること」
です。
立体版とシンプル版を使い分ける方法もあります
例えば、
Webサイト
立体感のあるカラー版
名刺
通常のカラー版
刺繍・ゴム印
モノクロのシンプル版
といったように、用途に応じてロゴを使い分ける方法もあります。
そのためには、最初の段階で「形そのもの」をきちんと設計しておくことが重要です。
シンプル=簡単、ではありません
「シンプルなロゴなら簡単に作れるのでは?」
と思われることもあります。
しかし、デザイナー側からすると、むしろ逆です。
要素が少ないほど、ごまかしが利きません。
例えば、
- 線の太さ
- 曲線の形
- 角度
- 余白
- マークと文字の距離
- 全体の比率
ほんの少し変わるだけでも、ロゴの印象は大きく変わります。
ロゴデザインでは、
「何を入れるか」と同じくらい「何を削るか」も重要です。
すべてをロゴの中に入れる必要はありません
会社やお店には、たくさんの特徴があります。
しかし、
「この特徴も入れたい」
「この商品も入れたい」
「この意味も表現したい」
と要素を増やしすぎると、かえって何を伝えたいロゴなのか分かりにくくなることがあります。
そのため私は、
伝えたい要素を整理する
↓
特に重要なものを選ぶ
↓
不要なものを削る
↓
シンプルな形にまとめる
という考え方を大切にしています。
ロゴは5年、10年と使われるもの
ロゴは、短期間だけ使用する広告画像とは違います。
一度制作すると、
5年
10年
場合によってはそれ以上
使われることもあります。
最初はホームページだけで使う予定だったとしても、数年後には、
- 店舗ができる
- 看板を作る
- 商品を販売する
- パッケージを作る
- ユニフォームに刺繍する
といった展開があるかもしれません。
最初からすべてを予測することはできません。
だからこそ、できるだけ幅広い用途に対応できるデザインにしておくことが大切です。
私がロゴを作るときに考えていること
私はロゴを制作するとき、Illustratorの画面の中だけで完成形を考えているわけではありません。
常に、
- 名刺にしたらどう見えるか
- SNSアイコンでも分かるか
- 数年後も使いやすいか
ということを考えながら制作しています。
最後に
ロゴは「平面だから良い」「立体だから悪い」という単純な話ではありません。
ブランドの方向性によっては、立体的な表現が適している場合もあります。
大切なのは、
そのロゴが、どこで、どのように使われるのか。
そこまで考えてデザインすることです。
そのうえで実務面を考えると、
①シンプル
②平面的
③小さくしても分かる
④モノクロでも成立する
⑤さまざまな媒体で再現できる
こうした特徴を持つロゴは、非常に使いやすいデザインになります。
良いロゴとは、単に完成した瞬間にきれいに見えるロゴではありません。
実際に使い始めてからも困らず、長く活用できるロゴ。
私は、そこまで含めてロゴデザインだと考えています。


